憲法(4)

『国会』

国民から国政を託された代表者が国家権力を行使する「代表民主制」。

 

・国民の代表機関(43条1項)

政治的代表であり、自由委任。

→代表者は、自己の信念のみに基づいて発言・表決すればよい。

 

・国権の最高機関(41条)

 

・唯一の立法機関(41条)

国会中心立法の原則:国の行う立法は、特別の定めがある場合を除き、国会が行う。

→例外:①議員規則 ②裁判所規則

 

国会単独立法の原則:国会の議決のみで立法出来る。

→例外:地方自治特別法(特定の地方公共団体のみに適用される法律)を制定するには、特定の地方公共団体住民投票による過半数の賛成が必要。

 

 

『国会の組織』

衆議院参議院:二院制なのは、①参議院のチェック機能 ②異なる時期による選挙によって、その時々の民意の反映

 

衆議院

任期:4年(解散あり)

定数:465人

議員資格:満25歳以上

選挙区:小選挙区比例代表区

 

参議院

任期:6年(解散なし・3年ごとに半数改選)

定数:248人

議員資格:満30歳以上

選挙区:大選挙区比例代表区

 

衆議院の優越

議員の権能の範囲、議決の価値に関して、衆議院の優越が認められる場合がある。

①解散制度、任期も短いことから、より民意を反映している ②1院を重視することで、国会の意思形成が容易になる

 

衆議院にのみ認められる権限」

内閣不信任決議権(69条)・予算先議権(60条1項)

 

参議院にも認められるが衆議院の議決が優先」

・法律案の議決(59条)

衆議院の先議権:なし

参議院が議決しない日数の要件:60日

議決しない場合の効果:参議院の議決を否決とみなすことが出来る

再議決:出席議員の2/3以上の多数決

両院協議会:任意(開くことも出来る)

 

・予算案(60条2項)

衆議院の先議権:あり

参議院が議決しない日数の要件:30日

議決しない場合の効果:衆議院の議決を国会の議決とする

再議決:不要

両院協議会:必要的(参議院が否決後に両院協議会を開いても一致せず or 参議で30日経過)

 

・条約の承認(61条・60条2項)

衆議院の先議権:なし

参議院が議決しない日数の要件:30日

議決しない場合の効果:衆議院の議決を国会の議決とする

再議決:不要

両院協議会:必要的(参議院が否決後に両院協議会を開いても一致せず or 参議で30日経過)

 

内閣総理大臣の指名(67条2項)

衆議院の先議権:なし

参議院が議決しない日数の要件:10日

議決しない場合の効果:衆議院の議決を国会の議決とする

再議決:不要

両院協議会:必要的(参議院が否決後に両院協議会を開いても一致せず or 参議で10日経過)

 

 

『国会の活動』

・常会(52条):毎年一回定期に開催される。会期は150日(国会法10条)。

・臨時会(53条):常会が閉会後も、必要があれば内閣が臨時会を招集できる。

また、いずれかの議院の総議員の1/4以上の要求があれば、内閣は臨時会を招集しなければいけない。

・特別会(54条1項):衆議院の解散後に施行される総選挙の後に召集される国会。

衆議院の解散した日から40日以内に衆議院議員の総選挙を行い、その選挙の日から30日以内に国会を召集しなければならない。

 

・緊急集会(54条2項、3項):衆議院解散後から特別会までの間に、国会の開会を要する緊急の事態が生じた時は、参議院の緊急集会を内閣は開くことが出来る。

→特別国会開会後10日以内に、衆議院の同意を得なければ、その効力を失う。

 

「会議の原則」

→定足数は総議員の1/3(56条1項)

→表決数は、基本は出席議員の過半数(56条2項)

例外(2/3以上):①資格訴訟裁判で議員の議席を失わせる(55条)

②秘密会を開く(57条1項但書)

③懲罰により議員を除名(58条2項)

衆議院での法案の再可決(59条2項)

憲法改正の発議(96条1項)

 

原則として、両議院の会議は公開。(57条1項)

ただし、出席議員の2/3以上の多数決により、秘密会を開くことが出来る。

 

『国会議員の特権』

不逮捕特権(50条)

→国会議員は会期中に行政権による逮捕権の濫用を防ぐ為、不逮捕特権が認められる。

例外:

①院外での現行犯

②院の許諾がある場合

また、会期前に逮捕されている議員については、議院が釈放を要求できる。

 

・免責特権(51条)

議院で行った演説、討論または表決について、院外で責任を問われない。

「議院で行った」とは、「本会議や委員会」などで「議員」として行った言論が免責特権の範囲。

プライベートな場所などでの言論は範囲外。

また、法的責任には問われないが、院内の懲罰責任は免責されず、議院の自律権から責任を問われる可能性はある。

 

・歳費受領権

国会議員としての報酬を受け取れる権利。ただし、減額出来ない旨の定めはない。

(※裁判官は在任中は減額出来ない)

 

 

『国会の権能・議院の権能』

国会としての権能なのか、議院としての権能なのか区別。

 

「国会の権能」

①法律の議決

②予算の議決

③条約の承認

内閣総理大臣の指名

憲法改正の発議

弾劾裁判所の設置(64条1項)

⑦財政の統制

⑧内閣の報告を受ける

⑨皇室財産の授受の議決

 

「議院の権能」

①役員選任権(58条1項)

②議院規則制定権・議員懲罰権

③議員の資格訴訟の裁判権(55条)※資格とは、法律的にという意味

④会期前逮捕議員の釈放要求

国政調査権(62条)※証人の出頭および証言、記録の提出を要求できる

⑥秘密会

国務大臣の出席要求

⑧請願の受理・議決

 

 

 

 

 

 

憲法(3)

自由権以外の人権→「受益権」「社会権」「参政権

 

受益権:請願権・裁判を受ける権利・国家賠償請求権・刑事補償請求権

社会権生存権社会保障制度にて実現)・教育を受ける権利・勤労の権利・労働基本権

参政権:選挙権・被選挙権・国民投票憲法改正)・国民審査(最高裁判所裁判官

 

『受益権』

・請願権(16条)

国または地方公共団体の機関に対して、国務に対する希望を述べること(請願)。

→それを誠実に処理する義務を課すにとどまる

誰でも、どの機関に対してもできる

 

・裁判を受ける権利(32条

 

・国家賠償請求権(17条)

公権力の不法な行使に対して、国家の賠償責任を認める制度(国家賠償制度)

国家賠償法にて規定

 

・刑事補償請求権(40条)

無罪の裁判を受けた場合、被った損害を国が補償する

 

 

社会権

社会的弱者が、国家に対して一定の作為を要求する権利

 

生存権(25条)

「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(25条1項)

 

25条2項で、これを実現する為に、社会国家として努力する義務。

→具体的な内容は書かれておらず、生存権の内容を具体化する立法があって、初めて生存権は具体的な権利になる

生活保護法・児童福祉法など(社会福祉)、国民健康保険法・雇用保険法など(社会保険

 

・教育を受ける権利

教育を受ける権利を侵害されない(自由権的側面)

国民が国家に対して、適切な教育の場を提供することを要求する(社会権的側面)

 

学習権:国民各自が、成長・発達し自己を実現する為に学ぶ権利

教育権:教育内容や方法を決定する権利

→教育権の所在は国民(親・教師)と国家の双方にある

→国も、合理的な教育制度の為に教育の大綱を決定できるが、教師に一定の範囲の教育の自由の保障

 

義務教育の無償(26条2項)

→授業料の無償を定めたものと解釈(現在では、教科書は無償になっているが)

 

・勤労の権利(27条)

勤労は国民の権利であり義務、また労働条件の整備を国家に課す

 

・労働基本権(28条)

使用者と労働者の実質的対等を図ることを目的。

団結権:労働者が団結して使用者との地位を対等に

②団体交渉権:労働者の団体が使用者と労働条件について交渉する権利(労働協約が締結される)

争議権(団体行動権):いわゆるストライキ。労働条件の実現を図るために団体行動を行う権利。

 

 

参政権

国民が主権者として、国政に参加する権利。

 

・選挙権:選挙に参加できる資格、または地位

・被選挙権:公職の選挙において候補者となり、当選人となる権利

被選挙権は、憲法で明文化はされていないが、選挙権と表裏一体と解釈。

 

普通選挙:財力、教育、性別などを選挙権の要件とされない選挙(反対→制限選挙

平等選挙:一人一票。(反対→複数選挙、等級選挙)

自由選挙:選挙への参加の自由。参加しなくても、罰金などの制裁を受けない(反対→強制選挙)

秘密選挙:誰に投票したか秘密。(反対→公開選挙)

直接選挙:選挙人が公務員を直接に選挙。(反対→間接選挙

 

 

 

 

 

 

憲法(2)

報道の自由、取材の自由

報道機関による報道の自由は、国民の知る権利に奉仕するものであり、21条にて保障される

取材の自由も、報道の自由を守る為に必要なものであるから21条の保障される対象ではあるが、直接保障されるものではなく、十分に尊重されるもの。

→報道機関の取材により得られたものに対する裁判所による提出命令は、報道の自由に及ぼす影響の度合い、提出命令の必要性、取材の自由が妨げられる程度などを比較衡量して決めるべき。

 

・国家機密との関係

報道機関による取材が、国家公務員法の定める「そそのかし」罪が成立するかどうか

→その手段方法が法秩序全体の精神に照らし、相当なものとして社会観念上是認されるものかどうか。→是認されれば、刑法35条で違法性は阻却される。

国家公務員法にて、公務員が職務上知ることの出来た秘密を漏らすこと(国家公務員法100条1項)、またその秘密を漏らすことをそそのかすこと(同法111条、109条12号)を禁止している

 

・名誉棄損と公益の関係

表現の自由の行使であっても、「名誉棄損罪(刑法230条)」になることはあるが、国会議員の不正の発露など、社会的価値が認められる場合もある。

 

①公共の利害に関する事実 ②公益目的 ③内容が真実である

場合は、名誉棄損罪にて処罰されない。

 

③に関しては、真実の証明が難しい場合(汚職事件のリークなど)でも、確実な資料・根拠に照らして、相当な理由のもとに、真実であると確信して書いたのであれば、真実性の証明がなかったとしても処罰されないと解釈

 

 

プライバシー権との関係

表現の自由は、プライバシー権と対することもよくあります。

 

有名人の私生活などの掲載している週刊誌など。

 

プライバシーの侵害の要件としては、

①私生活上の事実、または事実らしく受け取られるおそれ

②一般人の感受性を基準として、当該私人の立場に立った場合、公開を欲しないであろうと認められる

③一般の人々がいまだ知られていない事柄

の3要件が一般的。

 

 

・選挙運動の自由

選挙運動の自由も21条のもと保障される。

が、選挙運動が自由に放任されると腐敗を生むなどの懸念もあり、公職選挙法にて規制されている。

 

個別訪問禁止規定は、①買収や利益誘導の危険 ②感情による投票の左右 ③選挙人の迷惑 ④過当競争により候補者が忙しくなりすぎてしまう

等の理由により合憲と解釈

 

 

表現の自由の限界」

 

・二重の基準の理論

表現の自由などの精神的自由は、職業選択の自由などの経済的自由よりも、厳格に審査されるべきという考え方。

 

精神的自由を制約する法律の憲法判断については、裁判所が「積極的に介入し、厳格な審査基準」で判断。

 

経済的自由を規制する法律の憲法判断については、裁判所が介入するよりも、「国会の判断を尊重」していく。

 

・「事前抑制」と「検閲」

事前抑制とは、表現行為に先立って公権力(行政権、司法権など)がその抑制をするというもの。例外あり。(21条1項)

検閲は、この一部で、行政権が行うもので、絶対禁止。(21条2項)

 

例外事例:①事実でない ②公益目的でない ③被害の回復が困難 の場合は、例外的に事前抑制が認められる場合がある。

 

税関検査事件(最大判昭59.12.12)

海外からのわいせつな映画や書籍等の輸入が税関で止められた。

→①税関検査は検閲にあたるのでは? ②検閲とは?

 

検閲とは、行政権が主体となって思想内容等の表現物を対象とし、表現物の一部又は全部の発表を禁止する目的で、対象とされる表現物につき、網羅的一般的に発表前にその内容を審査した上で、不適当と認められるものの発表を禁止すること。

 

税関検査は、関税徴収手続きに付随して行われるものであり、思想内容等を網羅的に審査し、規制することを目的とするものではないため、検閲にはあたらない。

 

 

第一次家永教科書事件(最判平成5.3.16)

日本史研究者の家永三郎氏の教科書「新日本史」が、昭和35年の学習指導要領の改正により、申請後に教科書検定により323か所にわたる欠陥があったとして、検定不合格。

その後、修正して申請したが、条件付き合格後、再度修正して出版したので、予定よりも1年程出版が遅れたので、国家賠償訴訟を起こした。

→①教科書検定は検閲? ②どのような場合に国家賠償法上違法となるか?

 

教科書検定は、教科用図書の出版に対する事前許可としての法的性格を有するものの、検定をすることについての審査が執筆者の思想内容に及ぶものでない限り、検閲にはあたらない。

 

福祉国家として、国民に水準の高い教育を実施する責務を果たす為に、教科書検定は必要であり、出版の自由に制約があるとしても、公共の福祉を鑑みれば合憲である。

 

教科用図書検定調査審議会の判断の過程に、学説上の認識、教育状況の認識、旧検定基準に対する評価などに、看過し難い過誤があり、文部大臣の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、違法となる。→本件では、上記要件は認められず。

 

北方ジャーナル事件最判昭和61.6.11)

北海道知事選挙に出馬しようとしていたXに対して、「北方ジャーナル」誌が事実に基づかずに、Xを批判する記事を書いたが、これを知ったXが裁判所に出版の事前差止めを申請したところ、これに基づく仮処分となった。

これに不服の北方ジャーナル誌が表現自由を侵害されたとして、訴訟。

→①裁判所による事前差止めは検閲か? ②出版物頒布等の事前差止めの実体的要件と手続的要点は?

 

裁判所は司法権なので、検閲ではない。(検閲の主体は、行政権)

 

また、①事実でない ②公益目的でない ③被害の回復が困難 の場合は、例外的に事前抑制が認められる。

 

事前差止めを命ずる仮処分命令を発する際は、口頭弁論又は債務者の審尋を行い、表現内容の真実性等について主張立証する機会を与えることが原則であるが、表現内容が実体的要件(上記3要件)を満たしている場合には、例外的に口頭弁論又は債務者の審尋は不要である。

 

本件も、3要件を満たしているとの判断により、仮処分は合憲。

 

『経済的自由』

職業選択の自由

営業の自由とは、自己の選択した職業を行う自由であり、職業選択の自由に含まれる。

 

表現の自由と比べて、より強い規制を受ける

→社会的相互関連性が強い為、公共の安全と秩序の維持を脅かすおそらがあり、福祉国家の理念を実現する為には、政策的な配慮も必要。

 

消極目的:(国民の生命・健康を守る為の規制)

①許可制:風俗営業、飲食業、貸金業など

②届出制:理容業など

③資格制:医師、薬剤師、弁護士など

積極目的:(福祉国家の理念に基づき、社会的、経済的弱者を保護する為の規制)

①特許制:電気、水道、鉄道等の公共事業

②国家独占:旧郵便事業、旧たばこ専売など

 

・薬局距離制限事件(最大判昭50.4.30)

薬局の解説に適正配置を要求する薬事法は22条に違憲

違憲とする(消極目的)

許可制は、社会公共に対して弊害を防止する為の規制であり、

目的と手段の均衡を著しく失するものであり、違憲であるとの判断。

 

酒類販売免許制事件(最大平4.12.15)

酒税法10条10号の規定は、憲法22条に違憲

→合憲とする(積極目的)

「職業の許可制については、立法府の裁量を逸脱し、

著しく不合理であることが明白でない限り、

憲法22条1項に違反するものではない」とし合憲

本件は、酒税法の「その経営基盤が薄弱であると認められる場合」に該当して

免許が許可されなかったことに対する訴訟ですが、これは酒類販売業者の売り上げ代金未回収の危険を回避する為という立法目的は合理的であるという判断。

 

・公衆浴場の適正配置

これは、時代とともに、消極目的・積極目的ともに解釈としてはあるが、公衆浴場の適正配置の規制は合憲との判断。

昔は、家に風呂がないのが当たり前で、公衆浴場の転廃業を防止する為(積極目的)

また、国民保健と衛生の確保の為(消極目的)

 

 

居住・移転の自由(22条)

旅行の自由も含まれる。海外渡航の自由も22条2項に含まれる。

 

 

 

財産権の保障(29条)

具体的な財産権と、私有財産制を意味している。(財産を個人が所有することを認める制度)※著作権などの知的財産権も含まれる

 

29条2項では、財産権の限界として、公共の福祉の制約を受けることが書かれている。ちゃんと、法律で定めることとも書かれているが、この法律には「条例」も含まれる。

 

29条3項では、私有財産を公共のために用いるには、正当な補償が必要であると規定しています。(損失補償制度)

 

森林法共有林事件(最大判昭62.4.22)

共有林について、1/2以下の共有者が分割請求できないとする旧森林法186条は違憲か?

違憲とする(憲法29条2項)

あまりに細分化すると、森林の保護育成などに影響が出て、森林経営が安定せず、ひいては国民経済の発展にも影響があるということが立法目的であったが、規制の手段との合理性がないとして、違憲と判断。

(共有林の分割をしても、直ちに森林の分割化をきたすものではないし、他の形態による分割化は認めているのに対して、限度を超えた厳格な禁止規制である)

 

『人身の自由』

人の体が肉体的にも精神的にも拘束を受けないということ。

 

・奴隷的拘束からの自由(18条)

本人の意思に反して強制的に働かせられたりしない。

※消防・水防活動など、緊急の必要性がある場合に、強制的に協力を求めることは18条に反しない

 

・適正手続きの保障(31条)

国民の自由を奪ったり、刑罰を処する為には、「法律の定める手続き」が必要。

→公権力を「手続き」によって拘束することで人権を手続き的に保障するという考え

 

この手続きも「適正」なものでなければならない。31条に含まれると解釈。

 

具体的には、告知と聴聞の機会の保障。

→当事者に事前にその内容を告知し、弁解と防御の機会を与えなければならない

 

刑事手続きだけではなく、行政手続きへも準用。

→刑事手続きだけでなく、適正な手続きによる行政介入が人権保障には必要

 

成田新法事件(最大判平4.7.1)

過激派が成田国際空港付近に、「横堀要塞」なる工作物を設置して、

火炎車で管制塔内を混乱させる事件を起こし、

これに対して暴力主義的破壊活動を防止するため、

空港周辺の工作物の使用禁止や封鎖及び除去の措置を定めた

新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法」

(いわゆる「成田新法」現在の名称は

成田国際空港の安全確保に関する緊急措置法」)

を施行して、工作物の使用の禁止処分を実施。

憲法31条が行政手続きにも適用されるか?

 

行政手続きにも適用される。

しかし、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を

総合衡量して決定されるべきものであって、

必ずしも告知や弁明の機会を与えなくてはならないわけではない。

 

成田新法は、諸事情を総合衡量して、

工作物等の使用禁止の命令をするにあたり、

その相手方に対して

事前に告知、弁解、防御の機会を

与える旨の規定がなくても、

憲法31条の注意に反しないとしました。

 

『被疑者の権利』

逮捕などの身体的拘束には、司法官憲の発する令状(逮捕状、勾引状、勾留状)が必要。→令状主義

令状主義の例外:現行犯逮捕 ①犯罪と犯人が明らかな為誤認逮捕のおそれが少ない

②罪証隠滅・逃亡の恐れ

 

抑留:一時的な身体的拘束、刑事訴訟法にいう逮捕など。

拘禁:より継続的なもの。刑事訴訟法にいう勾留など。

 

34条で不当に抑留・拘禁されない権利が保障されているが、被疑者だけでなく、被告人にも及ぶ。

 

捜査機関による、侵入・捜索および押収についても、令状主義。

→「一般令状」の禁止:どこで、何を差し押さえるのか明示する必要。

 

行政警察行為による、所持品検査にも、令状主義が適用。

→令状なしで所持品を強制的に開示されない。

 

『被告人の権利』

拷問および残虐な刑罰は禁止(36条)

 

「公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利」を有する

・公平:構成やその他において偏りや不公平のおそれのない裁判所

・迅速:不当に遅延していない裁判

・公開:その対審および判決が公開の法廷で行われる

→対審に関しては例外あり(※裁判官の全員一致にて非公開→公序良俗を害する恐れがある時)判決は絶対に公開。

 

証人審問・喚問権と弁護人依頼権(37条2項、3項)

 

不利益な供述の強要禁止(38条1項)

→黙秘権(氏名の供述は含まれない)

 

自白の証拠能力の制限(38条2項)

本人の自由な意思に基づかない自白は証拠として認められない

→また、自白だけでは有罪に出来ない(38条3項)

 

刑事不遡及と二重処罰の禁止(39条)

実行の時に適法であった行為については、刑事責任はない。

→事後法の禁止、刑事不遡及

 

すでに無罪とされた行為についても、刑事責任は問われない。

→また、同一犯罪について、重ねて刑事責任は問われない

 

刑事補償(40条)

刑事補償法:無罪判決を受けた場合、国からの補償を受ける権利

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

憲法(1)

憲法

①自由の基礎法 ②制限規範性 ③最高法規

法律とは違う!

憲法は、国家権力を制限して、国民の自由・権利を守る為の基礎法

 

法律は、国民の権利・自由を制約。

 

基本原理→①国民主権 ②基本的人権の尊重 ③平和主義

 

① 国民が国政の最終決定する力を持っているということ

② 人が生まれながらに持つ基本的な権利(自由権参政権社会権・受益権)

③ 戦争と戦力の放棄(第9条)

 

 

「人権について」

人権には、固有性・不可侵性・普遍性がある。

(人権は、誰にも平等にあり、誰からも侵されない)

 

自由権(精神的自由・経済的自由・人身の自由)

参政権(選挙権・被選挙権・国民投票最高裁判所裁判官の国民審査など)

社会権社会福祉を求める権利、生存権など)

④受益権(裁判を受ける権利・請願権・国家賠償請求権・刑事補償請求権など)

 

憲法上、人権の主体は「国民」に限定されている→日本国籍を有する自然人

 

「法人」や「外国人」の人権は?

→法人も、性質上可能な限り、人権が保障される

→外国人も、権利の性質上、日本国民のみを対象としていると解されるものを除き、人権を当然に保障される

 

外国人の人権について

①入国の自由・再入国の自由は保障されないが、出国の自由は保障される

②日本国の政治的決定や実施に影響を及ぼさなければ政治活動の自由も保障される

参政権は基本的に保障されない(しかし、地方行政の長や議員への選挙権を法律で認めることは合憲)

 

そんな基本的人権も無制限というわけではない、、、他者の人権との兼ね合い、つまり「公共の福祉」により制限される

 

また、公務員は憲法で「全体の奉仕者」とされていることより、公務員としての人権の制約がある

 

①公務員の政治活動の自由

→職員は人事院規則で定める政治的行為をしてはならない

→ただし、公務員としての体をなさず、政治的中立性を害するものでなければ、許容される例もある

 

②公務員の労働基本権

団結権・団体交渉権・争議権 を制限→ 警察職員・消防職員・自衛隊員・海上保安庁・刑事収容施設職員

 

団体交渉権・争議権 を制限→ 非現業の一般公務員

争議権 を制限→ 現業の一般公務員

 

また、「被収容者」の人権も制限される

→刑事収容施設の規律及び秩序の維持において、制限が許容される例がある

 

 

憲法は国民の権利・自由を守る為に、国家権力を制限するものでありますが、

昨今、国民の権利・自由を脅かす力が私人の中にも登場している

例としては、マスメディアや巨大資本など。

 

これらを制限するのは、私的自治の法則に反するので、

社会的権力から守るには、私法の一般条項(民法90条、709条など)を適用する際に、憲法の精神をその解釈に読み込むのが「間接適用説」。

 

憲法の人権規定は私人間には、直接適用されない→民法1条、90条や不法行為に関する諸規定を運用して保護していく

 

13条 幸福追求権→14条以下に含まれない権利・自由についても、13条後段によって人権として保障される

 

「新しい権利」

プライバシー権→個人情報を暴露されない「放っておいてもらう権利」としてだけでなく、「自己に関する情報をコントロールする権利」として再構成。

 

・自己決定権

宗教上の信念に基づき輸血拒否の意思決定は人格権として認められる

 

・肖像権

みだりにその容貌・姿態を撮影されない自由

 

・名誉権

 

 

14条 法の下の平等

 

「相対的平等」・・・人の事実上の差異に着目した合理的な差別は許される

→税の徴収において、累進課税

 

14条においては形式的平等を目指しており、実質的平等は福祉国家の理念に基づき

社会権の保証等によって立法府主導で目指す

 

「平等について」

人種・信条・性別・社会的身分・門地によらず平等

 

遺産相続において、摘出子も非摘出子も平等。

→以前は、非摘出子の相続分は摘出子の1/2だった。

 

女子再婚禁止期間も、100日までは合憲。(父性の推定の重複を避ける為)

→以前は、6か月だったが、100日超過分は違憲

 

一票の格差

議員定数不均衡

以前は、「一人別枠方式」などを取って選挙区を振っていたが、違憲判断となり、是正。

 

まず①裁判所による判断で「違憲・合憲」→②違憲でも、合理的期間内に是正されればOK→③是正されなかったとしても、選挙を無効とすることによる弊害の大きさを考慮して、

事情判決の法理」により、違法を宣言するにとどめて、選挙は無効にならないというのが現状。

 

 

19条 思想・良心の自由

 

内心に留まる限り、他人の人権と衝突する恐れがないので、絶対的な自由として保障

また、内心の露顕を国家権力が強制することも出来ない

 

君が代起立斉唱の職務命令:卒業式において君が代起立斉唱を命ずる校長の職務命令は、単なる儀礼的な所作であり、特定の思想を強制するものではないので、合憲。

 

 

20条 信教の自由

 

1項は、「信教の自由」であり、宗教を信じるも、信じないも、どの宗教を選ぶかも自由である。また、国が特定の宗教をその権力によって保護・援助してはいけない。

 

2項は、宗教的行為を強制されない。3項は、「政教分離」について

 

信教の自由も無制限ではなく、公共の福祉を鑑みて限界はある

オウム真理教の件など、他人の人権を著しく害する場合など

 

 

政教分離

20条1項後段、20条3項、89条前段などにおいて国家権力の宗教に対する中立性が書かれている

 

 

23条 学問の自由

 

学問研究の自由・研究結果発表の自由・教授の自由

 

制度的保障と考えられる「大学の自治」については、

主体は教授その他研究者であり、学生はそれらの自由と自治の効果として学問の自由と施設の利用が認められているに過ぎない。

 

 

21条 表現の自由

「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」

 

内心における精神作用を外部に公表する精神活動の自由

 

自己実現の価値と自己統治の価値(民主的な政治を実現する社会的意義)

 

「知る権利」

国民が自由に情報を受け取り、また国家に対して情報の公開を請求する権利

憲法に明文されていないが、21条1項で保護されていると考えられる

知る権利も表現の自由の一環

 

抽象的権利なので、21条1項を根拠として、情報公開を国家に対して請求することは出来ず、具体的な立法が必要

→2001年4月より「情報公開法」施行:行政機関に対する情報公開請求権を具体的に定めた

 

反論権(アクセス権)

知る権利の一部。マスメディアの台頭によって、マスメディアにおける反対意見の記事の掲載を請求する権利が求められるが、これは21条を根拠とするが、これだけで反論権は認められない。

→かえってマスメディアの報道が委縮して、本来の国民の知る権利が損なわれる

 

 

1. 集会、結社の自由

集会、結社は表現の自由の一類型。これを行うに公権力は妨害してはならない

→公共の福祉に害する場合の限界:警察の警備などによってもなお混乱を防止することが出来ないなどの特別の事情がある場合

 

デモ行進も動く集会。21条で保障。

→同じく公共の福祉を鑑みての限界はあり

→デモに関して、許可制を定めて事前に抑制するのは、合憲。(公共の安全に危険を及ぼす可能性があるから。また、不許可の場合は厳格に定められていれば、事実上の届出制といえる)

 

 

結社の自由→団体を結成する、加入する、結成しない、加入しないという自由。

行政書士会、弁護士会など、専門技術を要し公共的性格を有する職業の団体については、強制加入が認められている